仕事内容

納棺師と湯灌師の違いって何?仕事内容を徹底比較してみた!

映画「おくりびと」の影響で「おくりびと」という名称が使われるようになりましたが
葬儀の現場では納棺師(のうかんし)、または湯灌師(ゆかんし)と呼ばれています。

納棺師と湯灌師には、どんな違いがあるのでしょうか?

仕事の内容は違うのでしょうか?

今回は、納棺師と湯灌師の違いについて徹底的に比較してみたいと思います。

納棺師と湯灌師の違い

読んで字のごとく
納棺師の仕事は、故人を棺に納めること。
湯灌師の仕事は、ご遺体を入浴させ洗浄すること。

名前の通りに解釈すると
湯灌師がご遺体の入浴させ洗浄したあと、納棺師が棺に納める。
それぞれが違う仕事を担当しているようなイメージです。

しかし「湯灌師」「納棺師」と呼び方は異なっていても
仕事の内容には大きな違いはなく、
どこで区別するのかについても、明確な決まりはありません。

会社によって、もしくは湯灌の方法によって名称が異なり
おくりびと、湯灌師、納棺師、エンゼルケアディレクターなどの名称が存在します。

どれも、亡くなった人を美しく棺に納める職業です。
その仕事の内容について、詳しく解説したいと思います。

湯灌とは?

まず、湯灌とは何なのか?
なぜ、湯灌を行うのか?
ここをしっかりと理解しておいてください。

湯灌とは本来、仏教の習慣です。

訪問介護のシャワー入浴に似ていて
浅い浴槽(バスタブ)を準備し洗顔、洗髪、洗体を行いご遺体を清めます。

洗うことによって、現世での煩悩を落とす意味があります。
この世に悔いを残さず、成仏してもらいたいという考えが根底にあるようです。

古式湯灌とは?

同じ「湯灌」でも「古式湯灌」というものがあります。
湯灌とは違う点は、浴槽を使用せず清拭(せいしき)によって
ご遺体を清める方法です。

遺体を入浴させるのではなく、布団に寝かせたままで清拭を行い
逆さ水や末期の水など儀式のみを行ったり
ドライシャンプーを使用して洗髪だけを行ったりと
葬儀社や業者によって方法は様々です。

「古式湯灌」と「湯灌」は違いが明確に定義付けされていないため
洗体の方法によって区別されるのが一般的です。

清拭(せいしき)とは

清拭(せいしき)とは本来、入浴が出来ない患者さんや
病弱な高齢者の皮膚の汚れを落とす目的で体を拭くことを言います。

エンゼルケアとは?

病院で亡くなってすぐに行う処置のことを「エンゼルケア」と言いますが
この時はアルコール綿を使い清拭を行います。

エンゼルケアは、ペースメーカーや人工肛門などの医療器具をはずし、
管を抜くなどの医療的な処置を行ったあと
アルコール綿で清拭したり、穴詰めをしたり、口を閉じたりします。

病院によっては専用のゼリーを用いて体液の漏出を防ぐこともあります。
しもの処置もあるので、身内は一旦退室をお願いされることが多いようです。

これらの処置を行ったあとで、葬儀屋さんに迎えにきてもらい
ご遺体を自宅や葬儀会館に搬送するのが一般的な流れです。

現在は、ほとんどの病院でエンゼルケアを行っていますが
看護師さんは、患者さんを扱うプロであって
遺体を扱うプロではありません。

葬儀、火葬を行うまでの数日間
出来る限り、ご遺体を綺麗な状態で保管するために
改めて湯灌を行い、お化粧などを施すわけです。

湯灌の目的


本来、湯灌には
来世で新たに生まれ変わって欲しいという願いが込められています。

また、現世の煩悩や苦しみ、そして汚れを洗い清めることにより
故人が新たな旅立ちをできるようにという意味もあり
古来より全国各地で大切にされてきた儀式です。

湯灌には、こういった宗教的な意味あいもありますが
本来の目的は雑菌を落とすことにあります。
本来、体内の菌は
生きていくことに影響がない数に保たれていますが
亡くなると、その均衡が崩れてしまい腐敗が始まります。

その進行をなるべくおさえるために
表皮についた菌を落とすのです。

湯灌と言っても大きく3つのケースがあり

シャワーを使う「湯灌」
身体を拭くだけの「古式湯灌」
身体を拭かず、処置、化粧、身支度のみの「納棺」に分けられます。

湯灌師は、入浴させるだけが仕事ではなく
納棺師も棺にご遺体を納めるだけが仕事ではありません。

どちらも同様に、ご遺体の処置を行った後に
着替えや髭剃り、お化粧などを施し、身支度を整え棺に納める。

ここまでが、仕事の内容になります。

湯灌師は昔からある職業なのですが
湯灌の内容は時代とともに変わっていると言えます。

湯灌の費用

湯灌は、葬儀社のオプションサービスである場合が多く
追加料金が発生します。

同じ湯灌でも、シャワー洗体の湯灌と古式湯灌では
料金にかなりの違いがあります。

やはり、浴槽を持ち込み洗体を行うには
それなりの手間も技術も求められますし、湯灌には専用の車両が必要になるからです。

湯灌費用の目安としては

古式湯灌:3~6万円
洗体湯灌:6~8万円
エンゼルケア:3,000円~15,000円
エンバーミング:15~20万円

湯灌とエンバーミングの違い

湯灌やお化粧で身支度を行ったご遺体は
まるで、眠っているかのような自然な表情になりますが
腐敗を抑えることはできません。

ドライアイスをあて、腐敗を遅らせているだけです。

エンバーミングとは、遺体を衛生的に長期間保存する技法で、
特殊な機械を使用し、腐敗防止処置や殺菌消毒などを施します。

湯灌の主な目的が現世の汚れや悩みを洗い流すという
宗教的・精神的なものであるのに対し

エンバーミングの主な目的は
衛生的に長期間保存するという科学的な処置なので
似て異なるものと言えます。

遺体に、このエンバーミングという処置を施す人は
エンバーマーと呼ばれます。

エンバーミングは、薬液などを使って防腐処理を行いますが
他にも、遺体の損傷している部分を修復して
生前に近い状態に戻す技術も含まれます。

【納棺師】
お葬式の際に遺族や参列者と対面できるように遺体の見栄えを整える。
衣装の着替えやメイクなどを施し、納棺する。

【湯灌師】
湯灌の方法は浴槽を使用するケースや
浴槽を使用せず清拭を行う古式湯灌などがあるが
どちらのケースも同様に、着替えや化粧などの身支度を整え納棺する。

【エンバーマー】
薬剤や特殊な機械を使用し、遺体を長期間保存する処置を行ったり
遺体の破損を修復などを行う。

湯灌の仕事内容と手順

湯灌(ゆかん)とは、ご遺体を入浴し綺麗にする作業のことを言います。

ご遺体は、死後2時間から3時間ほどすると
徐々に死後硬直(ご遺体の筋肉が硬くなる)が始まります。

お湯を使ってご遺体を温めることで
硬直を遅らせる目的もあったと言われていますが
お別れの儀式として行い、ご遺族の心の準備を整える意味合いもあります。

しかし、ご遺体の状態によっては
温めることが、逆に腐敗を進行させてしまうケースや
感染症で亡くなった場合など、湯灌が不可能なケースもあります。

湯灌師には、そういったご遺体に関する知識も必要です。

基本的に、2人1組で役割を分担しながら仕事を進めていくことが多いようです。

湯灌の流れ

末期の水(まつごのみず)

洗髪・洗体

化粧

お着替え

納棺

末期の水

末期の水は「死に水」と呼ばれることもあり、
息を引き取った故人の口に水を含ませて潤す儀式を言います。

故人の喉を潤すと同時に、生き返って欲しいという願いも含まれています。

この儀式は、お釈迦様があの世へ旅立つときに水を欲しいとおっしゃったことに由来しています。

箸先に脱脂綿を巻き、白い糸で結びます。
しきみ、菊の葉っぱ、鳥の羽根などを使うこともあります。

桶やお椀に水を入れ、脱脂綿を浸して湿らせ、故人の唇にあてていきます。

血縁が濃い順に行い、配偶者または喪主、子、親、兄弟姉妹、子の配偶者、孫の順に進めていきます。

故人がこの世で口にする最後の飲み物として、お水以外にも
好きだった飲み物、お酒やコーヒーなどを使用する場合もあります。

洗髪・洗体

まず、全身にマッサージを施した後
ご遺体にお湯をかけながら、お清めを行います。

必ずご遺体にタオルをかけ、足元から胸元へとお湯をかけていきます。

ご遺体にかけるお湯の温度を調整するときは、水に熱湯を足して調整します。

これを「逆さ水」と言いますが、
こうした普段とは反対の行動は、葬儀に関わる場面ではよく見られます。

洗髪や顔剃り、爪切りなどのお手入れを行い
タオルで拭き上げドライヤーで乾かし、仕上げをします。

ご遺体の鼻や口の中に綿を詰めることがありますが、
これは顔全体をふっくらとさせて元気だったころの表情に近づけるための処置です。

病院によっては、エンゼルケアといって
臨終を迎えた後で看護師が処置を行う場合もありますが
湯灌ような丁寧で細かい処置までは出来ないケースがほとんどです。

化粧

顔の色が悪くなる場合が多いので
男性女性ともに薄化粧を施します。

エンゼルメイク専用の化粧品がありますが
故人が生前に使用していた物を使うこともあります。

口紅などはとくに、色合いによって不自然に見えることもあるので
故人が使用していたものを使うことで、より自然な見慣れた顔に仕上がります。

整髪を行い、最期の装いを整えます。

お着替え

湯灌が終ると、故人が好きだった洋服や着物
希望がない場合は白装束にお着替えをし、身だしなみを整えます。

死に装束は左前で合わせますが、
衣服と同じように着せる場合と上から被せる場合があります。

装束を身につけたら、上帯(うわおび)手甲(てっこう)脚絆(きゃはん)などを着け、
六文銭(ろくもんせん)を入れた頭陀袋(ずだぶくろ)をかけます。

六文銭は三途の川を渡る時の渡し銭と言われています。

棺へご遺体を納める

棺へご遺体を納めます。

棺に納めたら、杖、網笠、草鞋、
生前故人が愛用していた品物を副葬品として納めます。

副葬品として選ばれることが多いのは、洋服や手紙、千羽鶴、写真などです。

飲み物を副葬品として納める場合は紙パックのものか、
紙コップに移してから納めます。

納棺師が気を付けていること

悲しむ遺族を目にすると、いたたまれない心境になりますが
遺族は納棺に立ち合うことで、心の準備を整えることが出来ます。

死を受け入れ、納得し、哀しみを自分の中で処理していくことは
グリーフワークの観点から見ても、
哀しみから立ち直る為のとても大切な作業です。

納棺師はその場に寄り添いながら
必要以上の感情移入をせず、自分の仕事に専念することが求められます。

納棺師は必要以上の感情移入をしないことの他にも
気を付けていることが多くあります。

時間

納棺師は一日のスケジュールが決まっていて、時間のゆとりがありません。

同じように、納棺の儀式に立ち会うご遺族にも予定があり
慌ただしく準備を行っている中で、時間を割いています。

組織や状況にもよりますが、納棺作業は基本的に約90分。

一つの納棺業務に何か問題が発生すると
自分の業務にも支障がでますし、ご遺族にも迷惑が掛かります。

納棺に際しては、遺族の悲しみとの折り合いをみながら作業を進め
周囲に悟られずに決められた時間内に作業を終えることが重要です。

遺体の状態

納棺師が取り扱う遺体の中には、痛々しい表情を浮かべている場合があります。
目を背けたくなる表情と対面することもあります。

また、傷や損傷が激しいケースや、
死因によっては、思いがけず腐敗が早いケースなど様々です。

感染症のリスクもあります。

遺体の状態を見極め、的確に処置を施すのが納棺師の仕事です。

時には、作業を終えたあとで
体液が流れ出てきたり、口が空いてしまったりして
手直しを求められることもあるので
常に気を引き締めて仕事にあたる覚悟が必要です。

ご遺族の方とのコミュニケーション

洗髪・洗顔、着替え、お化粧、髪のセットといった工程ごとに
ご遺族の方に確認していただき、要望を聞きながら進めていきます。

「もう少し明るい顔色にしてほしい」
「生前お気に入りだった服を着せてあげてほしい」など
ご遺族の方の要望を聞き、コミュニケーションを取りながら
できるだけ希望に答える努力も必要です。

ときには「洗髪・洗顔を手伝いたい」
「お化粧をしてあげたい」というご遺族もいらっしゃいます。

ご遺族が、故人の為に何かしてあげたいと思うのは
ごく自然なことです。

そういう時には、手を貸したりアドバイスをしながら
一緒に仕事を進めていくという臨機応変な態度も求められます。

納棺師のやりがい

納棺師は求められることが多く、厳しい仕事ですが
その分、やりがいや喜びも感じることが出来る素晴らしい仕事です。

自分が苦しい時や辛い時こそ、人の優しさを実感しませんか?

悔しさや後悔、納得のいかない感情を
どこに向けてればいいのか分からない複雑な心境の遺族にとって
納棺師をはじめ、葬儀に携わるスタッフは頼りになる存在。

一つ一つの言動が遺族の哀しみを和らげたり、
心の負担を軽くしたり
逆に哀しみを深めてしまうこともあるのです。

だからこそ、気を張り詰めて仕事に臨んでいるのですが
その苦労を遺族に認めて貰えた時の喜びは、言葉になりません。

また、納棺師は日々、亡くなった方や周りの方々の悲しみと向き合っています。

命のはかなさや、哀しみの深さを目の当たりにすることで
自分の生き方を振り返り、反省し、感謝することが出来ます。

今、生かされていることは当たり前ではない。

与えられた時間を大切にしなければと
自分の生き方を見つめなおすことのできる仕事は
少ないのではないでしょうか?

湯灌師の1日のスケジュール

納棺師の就業時間は大体9時~17時が基本です。
2~3人一組のチームで仕事を行います。

8:30:出勤 1日の流れを確認。

9:00:出発 現地に移動
通常は1日3~4件ほどの納棺、忙しいときには7~8件の時も。

9:30:到着・あいさつ
ご遺族と打ち合わせ。要望を伺う。

9:45:納棺作業開始
所要時間はおよそ90分~120分ほど。

11:30:作業終了・あいさつ・次の現場へ移動
ご遺族への声掛けを行い、次の現場へ移動。

これを1日3~4回繰り返す。

17:00:帰社
車両の衛生処理、備品の整理。

17:30:業務連絡・退勤
反省点をチームで共有し、書類作成。

翌日のスケジュールを確認し退社。

日によって手がける納棺件数が違いますし
現場への距離も異なるため、始業、終業共に多少のずれはあるものの
勤務時間は一般的な会社員とほぼ変わらないと考えていいでしょう。

納棺師の仕事に残業はある?

納棺師、湯灌師は仕事の性質により、
既定の勤務時間内に終わらない場合も多くあります。

準備や後片付けを含め、1件あたり1時間30分~2時間程度で終わります。

1日の訪問件数は、少ない日で1~2件程度、通常は3~4件。
冬場の繁忙期は葬儀の数が増え、
1日に5件以上の現場をはしごすることもあります。

また、場合によっては時間外の作業を依頼されることもあります。
残業がまったくないわけではありません。

納棺師の休日

納棺師はシフト制の会社がほとんど。
休日が不定期の場合が多いです。

基本は4週8休、週休2日制、
または、月に5日~7日が休みなどシフト制です。

さらに、少人数の会社の場合には、
休みの日でも急遽、出勤要請があることも覚悟しなければなりません。

今回は、納棺師と湯灌師の違いについて解説しました。

仕事の内容は少し違いますが
ご遺体の長期保存を可能にするエンバーミングや
その施術を行う、エンバーマーという職業も紹介しました。

あなたのお役に立てますように。